平成29年11月8日
静岡県知事
川勝 平太 様
自民改革会議
代 表 中沢 公彦
総務会長 和田 篤夫
政調会長 相坂 摂治
静岡県総合計画 静岡県の新ビジョン
富国有徳の「美しい富士(ふじ)の国(くに)」の人づくり・富づくり
基本構想及び基本計画に対する提言
<はじめに>
■ 現行総合計画について
平成23年度から現行の総合計画期間が始まって以降、我が国では、東日本大震災等の大規模な自然災害の発生や社会経済状況の急速な変化に見舞われてきました。こうしたなか本県では、命を守る危機管理、新産業集積による経済効果の創出、富士山世界文化遺産登録の達成、新東名高速道路の開通など、総合計画に基づき、県民生活に寄与する一定の成果を上げてきました。また、現計画は、期間を前倒しして実施してきたことにより、時間的、経済的、財政的な成果が得られたと評価されております。
私たち県議会は、現計画に対し、策定当初から提言を行うとともに、毎年度、常任委員会等において経過を審査してきており、去る9月議会においては、総合計画審議会の進捗に合わせて総括評価を実施致しました。
加えて、私ども自民改革会議では、今年2月に、総合計画に搭載された事業、政策の柱を中心に、「県政検証」を実施し評価したものであります。この検証においては、12分野、81項目、176指標を用いて本県の課題を明らかにしましたが、今回提示された次期総合計画の新ビジョンに対しても、検証で公表した課題について、本提言に盛り込んでおります。
■特筆すべき本県の課題、厳しい時代の潮流について
現総合計画について厳しく指摘しなくてはならないことは、基本計画で目指した501の具体的な取組の進捗率は95%以上という高い結果であったもの、268の数値目標の達成状況は、約4割の目標値がC判定いかに止まっており、基本構想における32の成果指標に至っては、6割以上が数値目標の期待値を大幅に下回る結果となったことです。これは、行政の財源と人材を計画通りに投資しても、目標達成に結びつかなかったことを表す結果でもあり、目標と施策の乖離が発生していることは、次期総合計画を策定する上で、特に留意する必要があります。
数値目標の多くが、県民の主観的な判断を指標に据え客観性に乏しい評価基準が目立ったことが最大の原因であると考えられますが、人口減少の全国順位が相変わらずワースト水準に止まっていることや経済成長率が全国水準未満を推移していること等については、潜在的な県民の力が発揮されていないと判断せざるを得ません。総合計画が掲げる目標は、県が実施する事業・施策の推進とともに、着実に達成されていくことが、本来のあり方であります。
■自民改革会議からの提言について
次期総合計画期間においては、2019年ラグビーワールドカップ及び2020年東京オリンピック、パラリンピックの本県開催が決定しており、県民経済への大きな効果が期待されるとともに、現計画で始まった、静岡空港の新たな整備、清水港へのクルーズ船誘致、世界的水準での資産の誕生など明るい兆しも数多くあり、本県の豊かさへと着実に繋げていかなくてはなりません。
一方、長期的取組である地震、津波対策の推進や出生率の引き上げ、若年層の県外への転出超過など、依然として本県は大きな課題を抱えており、次期総合計画では、これらの課題を確実に克服し、人口減少時代の地域間競争に打ち勝ちながら、世界的な憧れを発信し続ける静岡県を目指していくよう、以下の通り提言致します。
<基本構想への提言>
1、 全体を通じて、「富士の国」の表現を多用しており、「静岡県」の言葉が持つブランド力を損なう結果となることが懸念されることから、その使用については、本県の正式名称である「静岡県」を補完する視点での使用へと変更すること。
2、 現行の総合計画においては、「静岡県」を形容する表現として「ふじのくに」との表現となっていたが、次期総合計画では、「富士の国」との表現へと変更されている。これは、山梨県との差別化に課題があること、既に「ふじのくに」の表現で、施設名称などが進んできたこと等を考慮すると、「静岡県」を分かりやすく伝えるための補完表現として、「ふじのくに」に統一すること。
3、 現計画の成果についてまとめているが、成果のみならず、課題や今後の方針についても、現計画を省みるべきであり、課題についても言及すること。またここに課題を盛り込むことによって、課題の克服を前提とした理念を発想し追記すること。
4、 「ドリームズカムトゥルーインジャパン」が目指すものが、世界中の人々が本県で夢を叶えていけるとの意味を含んだものとされているが、元来我が国は、移民の受け入れを行っているものではなく、他国籍の人々が定住できる環境にはないのが現実である。よって、現行制度と合致した理念へと考え方を改めること。
5、 我が国は、自立した日本人によって自己責任と利他意識によって、人づくりを進めてきたものである。よって有徳の人づくりについては、社会へ貢献できる自立した日本人を育むという考え方を取り入れるべきであり、明記すること。
6、 総合計画全般について数値目標を設定する場合には、目標値と実際の施策とが相互に作用する構成とすべきであり、施策の推進によって実現され得る実際的な目標とすること。
7、 今後国が進めていくであろう社会保障の世代間バランスの均衡について、本県総合計画でも基本的な考え方を明記すること。
8、 「合計特殊出生率2」は、理想とする数値目標なのか、現実的に目指すべき数値目標なのか明らかにすること。
9、 政策を推進する過程において、情報公開、効果的な広報の実施、権限移譲、財政の健全化、県民参加機会の拡大等、行政経営の基本的な指標への特段の配慮が必要と考える。よって、政策推進の基本的なあり方として、経営指標との照会が可能な構成とすること。
10、 地域づくりの基本方向について、現総合計画の5圏域から4圏域へと変更されているが、圏域の捉え方としては、歴史的経緯、産業構造、風俗慣習に加え、人口規模、面積、インフラ整備の程度や現在採用されている政令指定都市制度を含む地方自治の権限状況等を総合的に考慮し、より地域の特性に配慮した地域の方向性を示すことが大切である。よって、政令市の権限を考慮し、適切な圏域を設定すること。
<分野別の提言の前に、全体を通じて>
1、 現時点での次期総合計画の基本計画(案)において、広範に亘って、四年間の年次計画が精密に作り込まれていない施策・事業が見受けられる。計画策定の完了までに、明確に将来見通しを立て、ロードマップとして客観的にわかりやすく仕上げること。
2、 成果指標、活動指標における目標値が、未だ「調整中」となっているものも多く、議会での審査に充分な時間を割くことができるよう、早期の提示をすること。
(以下省略)